INTRODUCTION
時は江戸中期。表現者たちの多くが幕府によって自由を奪われていた時代──。
その圧政に筆で抗い、世界を変えた一人の男がいた。天才絵師、葛飾北斎である。
平均寿命が40年といわれた時代に、90で没するその日まで筆を握り続けた北斎。その不屈の男が、齢70を超え、さらなる画境を見せつけた大作こそが、かの『冨嶽三十六景』である。マネ、モネ、ゴッホ、ゴーギャンといった名だたる画家たち、さらには作曲家のドビュッシーにいたるまで、世界中のあらゆるアーティストの脳髄を刺激し、影響を与え続けた“あの波”。
およそ200年経った今もなお、色褪せることなく人々の心を掴んで離さない“あの波”が持つ、真の意味とは?
これは、自由を求め、闘い続けた男の知られざる物語である。 ※世界的に有名な葛飾北斎の波の絵、冨嶽三十六景の「神奈川沖浪裏」は、2020年発給の日本のパスポート、2024年発行の新紙幣のデザインに採用されている。
STORY
町人文化華やぐ、江戸の町。その片隅で、日の目を見ない、ひとりの貧乏絵師がいた。勝川春朗 ─ のちの葛飾北斎である。
傍若無人なふるまいが災いし、師匠からは破門。食うことすらも、ままならぬ日々を送っていた。そんな北斎に、ある日、人生を変える転機が訪れる。歌麿、写楽を世に出した希代の版元(プロデューサー)・蔦屋重三郎が、北斎の秘めた才能を見出したのだ。
重三郎の後押しによって、「絵の本質」に気づいた北斎は、その才能を開花。誰にも真似できない革新的な絵を次々と打ち出し、一躍、人気絵師となる。その奇想天外な世界観は、瞬く間に江戸を席巻。さらに町人文化を押し上げたが、それが次第に幕府の反感を招くことに・・・。
CAST